新型コロナウイルス感染症の流行により急速に普及し、今では多くの企業で当たり前になった「テレワーク」。オフィス勤務とは違い、従業員が働いている状況が見えにくく、人事評価に頭を悩めていらっしゃる人事担当者や管理職の方も多いのではないでしょうか。テレワークの導入や運用コンサルティングを行っている当社にも、テレワーカーをどのように評価したら良いかについて非常に多くのご相談が寄せられています。
そこで今回は、テレワーク下で有効な人事評価制度について、前編・中編・後編の全3回の記事でご説明します。
前編はテレワークでの人事評価の難しさについてです。
テレワーク下での人事評価はなぜ難しい?
従業員の業務の遂行度や業績、能力、勤務態度などを評価し、報酬や昇進などの各種人事施策に反映させる「人事評価」。評価期間や評価項目は企業によって異なりますが、テレワーク下では人事評価が難しいと言われています。その大きな理由はどのようなものがあるか、主に次の3つがあげられます。
1.勤務態度が見えない
人事評価をする際に、成果・実績と併せて評価項目として設定されることが多い勤務態度や行動には、次のようなものがあります。
- 業務に対する積極性
- 周囲との協調性
- 仕事に対する責任感
- 遅刻をしないなどの規律性
テレワーク下でも「彼は必ず納期を守るから規律性が高いと言える」、「彼女はどんな仕事も断らずに引き受けるから積極性がある」のように、実績から勤務態度を推測することもできますが、オフィスで同じ空間で働いている時と同じように把握し評価することは難しくなります。
正しく把握できない状態で評価をつけてしまうと、評価された部下の立場からは「上司は自分の働きぶりをちゃんと見て評価したのだろうか?」というように、評価の正当性に疑問を感じ、評価制度そのものや上司や会社に対して不信感を持つことにつながりかねません。
人事評価を件数やパーセンテージなどの数値で表せるもので行う「定量評価」だけにすればよいという考え方があります。定量評価は、評価される側にとって納得感を得やすいという利点がありますが、一方で総務などの事務職ですべての業務を定量化するのは簡単ではないという問題があります。また定量評価が全てとしてしまうと、「数字目標さえ達成していればよい」というような雰囲気が社内に生まれてしまう心配もあります。
2.能力・スキルが把握しずらい
能力やスキルも成果・業績・勤務態度と並んで、よく評価の対象になる項目です。
能力評価は仕事を遂行するための「職務遂行能力」を評価するもので、職種や役職によって求められるものが異なりますが、評価項目になる能力には次のようなものがあります。
- 企画力
- 改善力
- 実行力
- 対人折衝能力
- 統率力
オフィスで仕事をしていた時には、実績に加えて、仕事ぶり、仕事の進め方、段取り、話の仕方、他者との接し方、コミュニケーションの取り方などを観察して、部下の能力を評価していましたが、テレワークが前提となると、能力評価に必要なこれらの情報が断片的にしか把握できなくなります。
成果・実績のみから判断できる能力は限定的なため、特に昇格を決定する際の評価は難しくなります。
3.コミュニケーションの質と量の低下
オフィスで一緒に働いている時と比較して、テレワークでは上司と部下の間で面と向かってコミュニケーションを取る時間が少なくなりがちです。「テレワークで部下が真面目に働いているのか、サボっているのかが分からない」というよく聞く管理職のお悩みもコミュニケーション不足に起因しています。
部下の立場からすると、テレワーク下では「上司にきちんと見てもらえていないのではないか」、「公正かつ公平に評価されず、昇格のチャンスを逃すのではないか」と不安を抱えている人が意外と多くいます。入ってくる情報が部分的なテレワークでは、見えない相手に対して疑念が生じたり、評価に対して不公平感を感じたりするのは当然のことかもしれません。自分から積極的に上司に相談したり、働きぶりを報告する部下もいるかもしれませんが、オンラインでの非対面のやり取りでは、相手の気持ちが察しにくく不安はなかなかぬぐい切れません。
いかがでしたか?人事担当者や管理職の方にとっては、共感することが多かったのではないでしょうか。次回は、テレワーク就業率100%のイマクリエの評価制度について具体的な内容をご紹介します。
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